それからの事を、私はよく覚えてない。
 ただ、まだ単純で、ナマイキなガキだった私は泣き顔のまま、彼に問いた
ハズだ。
「もっと他の技はないのか」と。
 その時、はじめて私に気付いた彼はちょっと驚いて、私の姿を見------

「刀は一つ、己も一つ、故に技も一つ。
 侍は、この一振りに生きてんだ」

 ニヤリと少年のように笑って、刀を振り続けた。
 あの美しい袈裟斬りを。何度も、幾度も。
 ただ-----私は見とれた。

 

 私の名前は侑。ただの侑。
 この乱世で、刀を帯びる一人の女。
 今日はちょっと、私の昔話を、聴いてもらえますか

 


 素振りは、朝まで続いた。

 

次頁   

[PR]動画