八つになったばかりの彼女とて、この世が乱世の最中であり、わざわざ
探すマネなどせずとも、理不尽なことがそこら中にあふれているモノだと、
理解していた。
村を焼かれた---------
親兄妹、友人知人は残らず、根こそぎ殺され、してその理由は、落武者、
野武士の負け戦の腹いせ、強奪目的に過ぎず。
疲れていた。
赤く、紅く、燃え崩れゆく我が故郷の村落を、振り返らず走った。
逃げた。
矢が頬をかすめ、刃が身を削っても、知った誰かの叫びが耳朶を打ち、
知った誰かの生ぬるい血が降りかかろうとも、少女は駆けた。
ただ逃げた故、泣いてなどいなかった。必死だった。